【メフィスト賞】血塗られた神話

「悪魔」と恐れられた街金融の若き経営者・野田秋人。彼のまわりで、関係する人が次々と惨殺されていく。常軌を逸した連続猟奇殺人の目的とは!?「金」ほど人間の本性を剥き出しにし、争いごとを生む物はない。人の命など毛ほどの重さも持たぬ街金融の世界で修羅を生きる著者ならでは、超リアルな問題作。

 

第7回のメフィスト賞受賞作です。今回もネタバレします。

主人公はかつて悪魔と恐れられた闇金の社長。しかし過去に厳しい取り立てで顧客を自殺に追い込んでしまったことを今でも悔いており、それが原因で捨てた女にも未練がいっぱい、また部下の仕事ぶりに過去の自分を重ねて苦々しく思うなど、ただワルイだけではない人間味のある男です。

過去の苦々しい事件から5年後、新たな顧客が殺されその肉片が主人公の元に届けられたところから物語が始まります。最初の事件に続き主人公の周りで次々と事件が起こりどうやら犯人の標的は自分だと気づくのですが…。

キャラクター、アクション、意外な犯人、救いのないラストとデビュー作とは思えぬよくまとまった作品だと思います。逆に今までのメフィスト賞受賞作からすると正統派なハードボイルド小説で新鮮でした。

ただ、身内が悲惨な死を遂げたからといって人はフランス外人部隊に入るものか…。犯人のハクをつけるためとはいえ突拍子もない気がするけれど、もしかしたら自分が知らないだけで意外とあるのかしら。フランス外人部隊の話を読んでみたいなぁ。完全に蛇足でした。

 

あと第6回のメフィスト賞受賞作である「歪んだ創世記」ですが、Kindle版が出ていないので購入を見送っています。こういうのって作者側に権利があるのかな?賞まであげたんだから出しておくれよ、講談社

 

血塗られた神話 (幻冬舎文庫)

血塗られた神話 (幻冬舎文庫)